そっちから誘っておいて、なんだよこれ


一言で言ってしまえば、藤代健介に誘われたからだ。

僕はCiftの拠点である渋谷キャストの開発をてがけた会社の社員で、いわゆるサラリーマンである。Ciftのなかでは圧倒的少数派だ。不動産デベロッパーと呼ばれる業界に身を置き、かっこよく言えば渋谷を中心としたまちづくりに携わっている。
しかしその実、1,000人を超える従業員を抱える企業の一人として、代替可能な歯車として働いている。そんな僕がなぜここに至ったのか、その経緯を少し話そう。

遡ると、彼との出会いは2012年のTEDxTokyo。

当時僕は「渋谷の街のブランド価値向上がミッション」というなんともふわっとした(でもとても楽しい)担当をしていた。厳密には主担当である先輩がTEDxTokyoを渋谷ヒカリエに誘致し、僕はそのお手伝い(と言う名の物見遊山)として当日は参加。そこでSpace Design Teamの一員である、自分より一つ年下の彼に出会った。
「自分は仕事のおこぼれでここに来ているのに、彼は自分で会社を持ち明確な役割を担ってここにいるのか」と感じたことをよく覚えている。

その後、TEDxTokyoは2013・2014と渋谷ヒカリエで開催。館側の主担当として関わるなかで彼と接する機会も増えた。気が付けば2013年末には彼の会社の忘年会にも呼ばれるくらい近い距離に。

そして2014年、彼が祐天寺のビル一棟借り上げて立ち上げたプロジェクトPROTOに、会社員としてではなく磯辺陽介として誘われた。(この頃から敬語ではなくタメ語になった)

PROTOについては以前つづったブログに譲るとして、ここが、僕がCiftに至る原体験だったと思う。そこで出会う人やもの、思考、対話、その全てが自分にとって新鮮だった。人は身を置く環境から強烈に影響を受けることを実感したのだ。会社と言う立場を離れていたから、その影響度はなおさらだった。

だからこそ、彼がCiftを着想した2016年夏、声をかけられたときは即答だった。PROTOが終了して間もなく会社で異動のあった僕は、当時少し停滞している気持ちがあり、何か変化を欲していたまさにその時だから、悩む必要は一切なかったのだ。

むしろ悩んだのはその後だった。

平たく言うと、Ciftの思想の進化スピードについていけなかったのだ。誘われた当時、まだCiftのコンセプトも構築中であって、僕は単純にPROTOと同じように「自分が変化できる機会」として捉えていた。
Ciftの拠点となる渋谷キャストはそれなりの家賃で、僕の給料だけでは現実的ではなかった。そこで会社から支援をもらうように交渉はしていたが、その点以外にハードルは無いと思っていた。

しかしCiftのコンセプトが明確になって行く中で彼は、僕がまだ本来の要件に達していないことを入居面談に際して告げた。その当時の言葉を借りれば「あなたはまだ自己実現を目指すフェーズ」だと言うのだ。

僕が相変わらず自分のことばかり考えている間に、Ciftは、自己実現を終え“社会実現”とでも言うべきフェーズに人たちによる平和活動へと進化していた。

そこからしばらくは苦悩が続いた。会社ではなんとか交渉がまとまり、支援を受けられるようになった(厳密には“社内公募”となり選考が設けられ、それをパスした)。それなのにCiftの目指す平和活動のスタートラインにすら立てていない状況に、ただただ焦る。
入居までは3カ月を切っている。そんな短期間で自己実現を達成し、スタートラインに立てるわけがない…。
思わず「そっちから誘っておいて、なんだよこれ」と独り言つ。

それでもいま僕はCiftの一員としてここにいる。つまりスタートラインに立てたのか?それは否である。

言うなれば補欠合格のようなものだ。短期間で自身が劇的に進化したわけではない。ただ、彼がその状況も含めてOKを出したわけだ。曰く、僕のようなまだ自己実現のフェーズにいる人間がいることで、結果として周りが「ふふっ、こんな時期もあったよね」といった具合に母性を育む触媒になるかも、と。
また、リソースを多く持つ企業の一員だからこそできることがあるかもしれない、と。(ちなみにもしこの短期間で自身に起きた変化を上げるとすれば、唯一、自分の未熟さを認めた、ということだけだ。)

「あなたは、なぜCiftに入ったのですか?」


そんなわけでこの問いは僕がCiftにいる他の誰よりも考えなければならない問いなのだ。スタートラインに立てていないということは変化する余白があるとも言える。だからこそCiftに身を置く中での自己変容の過程を見せられる一番の人間なのだと。

このCiftメディアは質問を軸にしており、同じ質問に「今の自分」として何度も答えることで自己変容の言語化をサポートするという設計思想だそう。であればなおさらこの場は、僕にとってお誂え向きだろう。

今回はまず、約1年前に遡った自分を想像しながら答えてみた。次はさっそく「今の自分」として答えてみたい。