Ciftのこれまでとこれから。平和活動のための「ガバナンス」はどうあるべきか?


この記事を書いている目的

初めまして、透(とおる)です。

普段は長野県にある小さな町「小布施」を拠点に、行政や企業の政策・事業立案、仕組みづくりのお手伝いをしています。

今回、Ciftメディアで初めて記事を書いていますが、ここでは、今僕がCiftの中で担っている「Ciftのガバナンス」のこれまでとこれからについて取り上げます。

Ciftの家族になってまだ日が浅いメンバーや、これから参加するだろうメンバー、それに加えて、Ciftの家族としての月日が長くても、これまでガバナンスの変遷を理解する機会を得られなかったメンバーに向けて書いています。

Ciftのガバナンスのこれまでについて整理し、Ciftのみんなに、ガバナンスに対する認識を深めてもらうこと、また、よりよいガバナンスのあり方を考え、実装していくために、今後Ciftのガバナンスチームに、興味のある新しいメンバーに入ってもらうことができたら。

そんな思いで筆を進めていきたいと思います。

まず、そもそも「ガバナンス」とは何で、なぜ必要なのか。そのことについて簡単に触れた上で、Ciftのガバナンスの現状について書いていきたいと思います。

ガバナンスとは何か

まずウェブで簡単に調べてみると、ガバナンスとは「統治。支配。管理。また,そのための機構や方法。」(三省堂 大辞林)とのこと。

公益法人協会の定義では、「一般的には組織における意思決定、執行、監督に関わる機構のこと」を指します。

組織やコミュニティ全体にかかわることを、透明性を持って意思決定し、意思決定したことを現実に落とし込んで執行すること、さらにそれが正しく執行されているのか、違反や齟齬がないのかを監督するプロセスや仕組み全体のことを、「ガバナンス」と呼ぶようです。

Ciftは「拡張家族」を手段とした「世界平和」という、共通する目的や価値観のもとに集まった人間によるコミュニティ(集まり)ですが、どんなに価値観を共にする人間同士であっても、それまで生きてきた生活スタイルや文化は当然異なります。

特にCiftが掲げるのは「共に暮らし、共に働く」家族としてのコミュニティ。全体性を持ったワークライフを共有しながら、互いに汗をかき、お金を出し合い、本気になってコミュニティを育むことが求められます。本気だからこそ、当然個々人の異なる背景やそこで作られてきた「当たり前」同士がぶつかり合うことも出てきますし、それが健全です。

そこで、全体にかかわる諸課題・諸問題について、透明性を持った意思決定とその執行、さらには執行後のチェックや振り返りなどのプロセスを設計し、実際に運営するチームとして、Cift発足から約半年後の2018年1月に、「ガバナンスチーム」が緩やかに発足しました。

では、具体的な仕組みはどうなっているのか。まずは、現在のCiftにおいて、ガバナンスの中心になっている「家族会議」について書いていきたいと思います。

現在の「家族会議」について

Ciftでは、現在全体にかかわる唯一の意思決定の場として、「家族会議」というものを月1回実施しています。

毎月20日の朝7時から開催されるこの場では、約2時間の中で、様々な意思決定事項を取り扱っています。

実際の会議では、オンラインでの参加者も含めて、毎回1/3から半分程度のメンバーが参加しています。現状では、全体のファシリテーションを僕が担い、不在のときや早く抜けないといけないときに、他のメンバーにその役割をお願いしています。

意思決定の対象となるテーマは本当に様々ですが、これまでの議事を見ていると、Ciftという家族を運営する上で必要な最低限のルールや、毎月1人10800円ずつ集めている組合費の使い方に関する議題が多くなっています。

月ごとに事前に全体で議論したいテーマを集め、会議1週間前までに議事を公開し、事前に読んで違和感のある提案にコメントすることができるようになっています。

意思決定の方法としては、そこに参加しているメンバーの合議を基本としつつ、多数決は意識的に採用していません。時間の範囲内でできるかぎり議論を尽くし、参加メンバー全体の納得感を大切にしながら(つまり、かなり感覚的な部分を大切にしながら)、意思決定をしています。

会議を運営し議論・意思決定していく上で、これまで不文律的に大切にしてきた原則は、「ルールは最低限であること」、「変化することを厭わないこと」の2つ。何か問題が起きても当事者同時のコミュニケーションでの課題解決を尊重し、オフィシャルなルールは少ない方がいい。それでも必要だということで作ったルールも、状況に応じて見直せばいい。これがCiftの基本的スタンスだと理解しているので、家族会議もその文化を尊重した運営を心がけています。

「月次報告」から「意思決定」の場へ

この「家族会議」という枠組み自体は、Cift初期からあったものの、当初その位置付けは「議論」や「意思決定」を目的としたものではなく、すでにCift内で役割分担(広報、会計など)されているメンバーからの「月次報告」の場でした。

これはどこの組織や会議体でも同じだと思いますが、議論や意思決定のための場ではなく、報告することが会議の目的となると、会議に集まる理由やモチベーションを維持することはとても難しくなる部分があると思います。当時のCiftの家族会議も参加率はあまり高いという状況ではなく、僕も不参加の多い当事者の一人でした。

加えて、Cift発足から半年経過し、そもそも全体での議論や意思決定が必要な事項が増えているのにもかかわらず、その意思決定プロセスが明確ではない(一部の人間でなんとなく決まって事後報告される)という問題もありました。

これらの状況を踏まえつつ、「家族会議」という場の目的を再設定するとともに、大切なことがメンバーの納得感を伴って意思決定されるためのプロセスづくりや、違和感を持ったメンバーが意見を表明しやすい場づくりを進めていくことを意識して、家族会議を運営することにしました。

これまでの「家族会議」の改善プロセス

このような認識のもとで、これまでガバナンスチームで具体的に進めてきたことは、概ね以下のことになります。

(1)発起人以外をファシリテーターに置く

それまでの家族会議は、多くの場合、Ciftの発起人であるけんちゃん(藤代健介)が場のファシリテーターを担っていました。

当時の人事のほぼすべてを担い、誰よりもCiftで時間を過ごしているけんちゃんがファシリテーターを担うという状況は、当時としては仕方ないことではありつつ、本来の場づくりの原則からすると、決して望ましい状態とは言えませんでした。

議論をファシリテートする人間と、議論に対する疑問や質問に答えるメインの人間が同じになってしまうと、ほぼすべての時間、その人が話し続けることになります。

これでは、当然多様な意見は生まれませんし、コミットメントが高い人間にとっては当然ではあっても、多くのメンバーにはその背景がわからない「Cift用語」のようなものも頻出し、関わりがまだ濃くない(つまり、最もキャッチアップを必要としている)メンバーが置き去りになってしまいがちです。

一方で、一番情報を持っている人間が自由に発言できないことは、それはそれで必要な情報が共有されない場を生み出します。

まずは、ファシリテーターという役割に慣れていて、何よりCiftの幽霊部員としてそもそも「何もわかっていない」自分がその役割を担うことで、上記の課題をクリアできるのではないか。そんなことを思い、家族会議でのファシリテーター役を引き受け、けんちゃんにも一参加者・提案者として、自由に発言してもらえる環境を作りたいと考えました。

(2)家族会議への議題の提案プロセスを明確化させた

これまでの家族会議では、何を誰がどのように提案できるのか、そのプロセスが曖昧でした。そこで、全体で意思決定したい、議論したいことを持つメンバーが、「家族会議」に提案するまでの具体的な方法やプロセスをつくることにしました。

具体的には、先ほども書いた通り、①2週間前に家族会議への議事提案の呼びかけを全体へ行い、②1週間前までに議事をまとめて全体に流し目を通してもらった上で、③毎月20日朝の家族会議本番を迎える、というシンプルな構成です。

これを、ガバナンスチームのメンバーで分担して取り組むことにしました。

(3)家族会議専用の情報共有グループを作成した

上記のプロセスを実務的に回したとしても、その情報やコミュニケーションが家族の中で適切に行われていかなければ意味がありません。情報共有を図ることを目的に、家族会議専用の情報共有プラットフォームが必要だろうと考え、Facebookグループで新たに「Cift家族会議」グループを作成し、メンバー全員に入ってもらうことにしました。

とはいえ、Cift家族会議グループに議事や重要事項を投稿しても、なかなか見てもらえない可能性が高いので、普段コミュニケーションツールとして良くやりとりされているFacebookメッセンジャーのグループやLINEグループに、都度情報を投げ込むようにしました。

(4)「家族対話」を提案議題の成熟化の場に

家族会議を運営していく中でわかってきたことは、メンバーそれぞれからの提案が僕らに上がってくる段階では、(いい悪いは別として)提案内容や論点が、まだ個人の違和感や不満を超えないレベルにある場合が多いということです。

特に大人数で議論したり意思決定する場合には、もともとの議題の成熟度や問いの深さ・明確さが、議論や意思決定の時間短縮や質の向上に直結します。

個別に連絡が来る段階での議事案を、一つ一つ、より良いテーマや問いにしていくプロセスを限られた人数で進めるのはとても負担が大きいうえに、限られた人間の中で完結するプロセスでは、結局テーマの内容が全体に伝わらない、染み込んでいかないという問題があります。

そこで、それまでメンバーが都度好きなテーマについて語り合い、お互いについての理解を深める場として実施されてきた「家族対話」を、積極的に「家族会議」に向けたテーマの深堀の場としても活用していくことにしました。

会議という意思決定を前提とした場の前に、多様な意見や体感値を受け止め、対話的に議事を深める時間をつくることで納得感をもった提案につながりやすいことは、すでに多くのCiftメンバーが体験していることだと思います。

ガバナンス2.0に向けて

2018年1月に、まずはやってみようとはじまった、Ciftガバナンスの歴史は、今のところこんな状況にあります。

この仕組みや改善をリードしてきた当事者としても、率直に現状のあり方は、まだまだ課題が多いなぁと感じています。では、具体的にどんなことに違和感や課題を感じているのか、それに対して、何ができるといいなと思っているのか、以下に少し書いてみたいと思います。

(1)スケジュール通りに動かせない

まず大きな問題は、2週間前に議題募集、1週間前までに整理して議題を全体に提案、というスケジュールを、しっかり守れたためしがこれまで一度もないこと(笑)。

これは、そもそも僕自身がスケジュール管理に弱い人間であるという問題が第一ではあるのですが……もう少し俯瞰すると、その凸凹をサポートするチームが作れていないこと、議題自体が直前に上がってくることが多いのも原因の一つだと思っています。

これについては、今年の冬に「まずはやってみよう!」と立ち上がったガバナンスチームが、他の役割や仕事の都合などでガバナンスを担えない状況があること、その一方で、新しくCiftの家族になったメンバーを巻き込みきれていないのが原因だと思っています。

今後は、改めて体制を再構築して、情報が非対称になっているメンバーが中心的に担えるチームに変えていけるといいなぁ。そんなことを考えています。

(2)家族対話を通過しない(熟していない)議事が集まる

Ciftとしての活動やプロジェクト、拠点が増える中で感じている変化は、多くの議事が直前に上がってきたり、意思決定を急いで提案するメンバーが増えているということ。

この状況が進むと、直前の提案をブラッシュアップするのは家族対話という「場」ではなく、議事を作成するチームの「仕事」になっていきます。ガバナンスチームの負荷が高まる一方で、ガバナンスチームが頑張ってわかりやすい議事を作成しようとすればするほど、結局のところ「わかった気になる」メンバーが増えてしまうことを後押しするだけのような気もしています。

これは、そもそもスケジュールを徹底できていないこと(しなくてもいい状況を生んでいること)、そもそも家族会議のプロセスについて家族の中で認識が深まっていないことなどが原因だと思っていますが、議事作成チームをもっと家族の中で増やし、プロセスの中でたくさんの視点や細かい議論が生まれる設計にしていくことも必要だと感じています。

(3)意思決定されたことが実装されない

これまでの家族会議では、議事提案から家族会議の実施までのプロセスを作り、回すのに精一杯な状況でした。そこで意思決定した内容は議事録に残して全体に共有するのみで、その具体的な執行は、個人個人の自主性やそこに関係する担当メンバーの動きに任せていました。

任せていたというと聞こえがいいですが、手が回らずそのままにしていたというのが本当のところです。

そもそも現実社会のルールである法律は、警察権力(法律を守っていることを監視し、守らない場合に罰則を与える機関)や、その実行実務を担う行政機構があってはじめてその効力を発揮しますし、法律的に規定されていない社会規範も、「周りの目」によって、秩序維持が保たれています。

「世界平和」に向けた個人個人の主体的な自己変容を掲げているCiftとしては、警察権力や社会風習的な、監視を前提としたルールづくりは原則的にはやるべきではないと思っています。が、それは、何もしなくても意思決定したことが執行されていくということとは違う話で、ゆるやかな行政機構的な仕組みは必ず必要になります。

Ciftでは、生活体験を通じて得た知見をアーカイブ化するために「AOI」(Archive of Inteligence)をつくることを家族会議で決め、そのチームをゆるやかに作っています。また、会計を担当するチームもあり、今後は、意思決定した内容をアーカイブ化した上で、その実装につなげるコミュニケーションも大切にしていくことが必要だと考えています。

(4)そもそも論:世界平和や自己変容を促すためのガバナンスのあり方とは?

ここまで述べてきたことは、どちらかというと、これまでの実践の中で見えてきた課題とその対応策の一片ですが、そもそもCiftは、世界平和や、そこにつながる小さな平和活動としての個人の自己変容を大切な価値観としています。

ならば、ガバナンスのあり方も、効率的な意思決定や実務重視のルールづくりのあり方を目指すのではなく、少し不便であっても、その価値観を体現し、参加するメンバーの自己変容をプロセスに内在化できる仕組みを作っていく必要があると感じています。

例えば、毎回の家族会議で多くの議事が出ること、分かりやすい結論が出ること、全員が家族会議に参加することは、大切なことだけれども、必ずしもゴールではない、ということです。

むしろ、議事をつくる過程でたくさんの対話が生まれたり、価値観がぶつかったり、一度作ったルールやプロジェクトを何度も見直すループが生まれたりする中で、家族のみんなが、当たり前から一歩踏み出し自分を拡張する機会を得ることが大切なのではないか。この文章を書きながら、そんなことを考えています。

じゃあ、それはどういう形なのか。その具体的な形が、これからガバナンスチームが構築していくべき、もっとも大切な仕組みだと考えています。

最後に

この記事は、最初に書いたとおり、Ciftのガバナンスのこれまでについて整理し、Ciftのみんなに、ガバナンスに対する認識を深めてもらうこと、また、これからのCiftのガバナンスチームに、特にこれまでの経緯を知らないメンバーに参加してもらえたらという思いで書きました。

ぜひ、一緒にこれまでの経験値を引き継ぎながら、Ciftの新しいガバナンスのあり方を考え、一緒に試してくれる家族のメンバーが一人でもチームに参加してくれたら、そして、こんな長い文章を読んでくれたCiftメンバーではない方々にも何か気づきがあれば、僕としてはとても嬉しいです。

改めて、最後まで読んでくれて、本当にありがとうございました。

大宮透