【Cift京都】素敵スパイラル万歳─cityとruralの間から


入居者を連れて内見していた山倉あゆみから写真とともに驚きの声が届いた。
なんと、あの内装決めからわずか一週間で、2階階段横ホールのカウンターができていたのだ

「もう出来てるー! すご!」

工事も佳境。建物のリノベーションが完成に近づき、いよいよ生活の場面が見えてきた。そして、思い描く暮らしのシーンをイメージしてうきうきしていたら、どんどん素敵な面々が集まり、疏水には蛍が舞い始めた。

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もともとからのコアメンバー5名は、京都在住3名、多拠点2名。男子3名、女子2名。プロジェクトマネージャー、フォトグラファー、ディレクター、建築家、コミュニティオーガーナイザー、家庭料理人、ライター、編集者、まち歩きプランナー、猫好き、犬好き、子供好き(人数より属性が多いのは、全員がマルチロールでポリロールだからだ)。

そこに参入してくる人たちのキャラクターは属性で語りきれるものではないが、漆作家、金継職人、翻訳家、山野草の達人、僧侶、まちづくりコーディネーター、古美術商、キュレーター、茶人、料理人、音楽家、ミュージシャン、弁護士、編集者、プランナー、大学生、野生児、などなど。

ひとりで部屋を借りて定住する人もいるが、大半のCift部屋は数人でシェアするスタイルになる。シェアの人数も仕方も使い方もさまざまだ。まずは、気の合う仲間とシェアメイトになり、多拠点生活や京都滞在の場所にするというケース。Ciftでも多いシェアのスタイルで、以前少し触れたCift男子部屋はこのタイプになるのかな?

次に、住む部屋というより、何らかの活動場所としてスペースを使いたいケース。このタイプの部屋の動きが、それぞれに「らしく」て面白い。

たとえば、私が計画している仮称「お茶部屋」もそのひとつ。気ままにお茶を飲むのももちろんだが、ここ数年見よう見まねでやっているお茶づくり(製茶)の拠点にもしたい。何なら台湾で求めてきた焙茶機も置こうかしら。飲むだけでなく食べるほうも無論する。なんといっても修学館からはル・フェーブもタンドレスもラ・クラシックもラ・マルティーヌもみたらし団子も黒みつ団子も嘯月も近く、ミャーゴラだって聚洸だって自転車圏だ。いずれもスイーツの名店で、スイーツ王国京都のなかでも私の大好きなお店様たち。うれしい。気の合うメンバーでシェアして、もしかしたら本とかも少し入れて、編集学校の仲間と読書会なんかできたらいい。スパイスや薬草に明るい友人も興味をもってくれているから、スパイス教室やチャイのワークショップが始まったりするかもしれない。

もうひとつ、「コネクト部屋」(仮)という企画がつい先週に爆誕した。アーティストや作家や職人が何人か関わり出したのと前後して、古美術商やコレクターやキュレーターや編集者が集まり始めた。なんだかこの顔ぶれは相性がよさそうだぞ。みんな生活のための部屋というよりは表象の場や扉をつくろうとしているようにも見える。ここから何かが生まれる予感が強烈にする。というより、もはや確信と言っていい。コネクト部屋の顔ぶれや部屋のあり方はまだ未知数。ディレクター山倉あゆみのわくわくが伝染してみんなが楽しくてたまらない。ここからの参画と激変もあり得ると思っている。

こんなふうに加速しはじめたプロジェクトの吸引力はなかなかのもので、Cift内部での関心も日に日に高まっている。我々の匍匐前進をずっと見守ってきてくれた心の同志のまなざしは無言であっても大きな力になる。背中からの応援を感じつつ、さてここから家具・家電をどうしようかという今、Cift京都チームは新たな実験を試みようと思う。

現状、7月中には建物内での生活が一部スタートできる見通しだ。だが、その時点ですべてを揃えてスタートするのではなく、そこから一般入居の始まる9月までに、住み開きのような手法で暮らしながら家具や備品やルール編集など生活の中身を徐々につくっていく。共有部の家具も、必要に応じてつくったり、持ち寄ったり、ハウス内クラウドファンディングで購入したりして、コミットメントと共に充実させていく。そんな始め方を考えている。

photo by 大月信彦

以前Ciftの役割についての記事で触れたことにも通じるが、等価交換と契約の世界観よりも、贈与と互助の世界観をこそ、Cift京都の「地」としたい。下鴨という場所は、首都として生まれた京都の周縁にあって生産地であるrural(じかた)と消費地であるcity(まちかた)のインターフェイス機能をもつ。奈良文化財研究所景観研究室の惠谷浩子さんが鋭く言い当てた「(じかたとまちかたの)フィルターとしてのエッジ」にあたる。都市と消費と等価交換と分断に背を向けたくなった人が修学館に集まってくるのは、だから土地と場が生んだ必然と言えるだろう。

このタイミングで人の移動がしやすくなってきたのはありがたい。東京、滋賀、石川、大阪、淡路、京都、それからそれから? 各所から集まった愉快な面々と、ここからの動きを一気に組み立てていく。素敵スパイラル万歳!

photo by 大月信彦